時代のせいなのでしょうか?
- 『スラム$ドッグミリオネア』
- 『幸せのちから』
- 『万引き家族』
などなど社会格差を描いた作品が昨今では受けるようになってますね。
『パラサイト 半地下の家族』もまたお金持ちと貧乏人の格差を描いた作品です。
IT分野の起業に成功し高台の豪邸に暮らすパク家と、一家全員が失業中で貧しい半地下暮らしのキム家。
正反対の世界に暮らす2つの家族の交わりを描いたストーリーである本作。
ポン・ジュノ監督が2013年にアイデアの着想を得て、じっくり考察を練ること4年!
ついに昨年の2019年に公開されました。
結果、韓国映画初のパルム・ドールを受賞し世界各国から絶賛の嵐。
日本でも『万引き家族』や『海街diary』で知られる是枝監督など多くの著名人から称賛されています。
ポンジュノの表現力や奇怪なストーリー展開もそうですが、やはり社会格差や貧困というテーマを使った映画は、多くの人の中にインパクトを残すものなのでしょうか?
僕も社会的に見ると、ろくに定職も付かずふらふらとブログを書いて生きている人間なので超貧乏です。
だからやはりこういった社会格差を皮肉ったような本や映画を見ると魂にグイグイ来てしまいます。
という事で今回は、パラサイト半地下の家族内で描かれている格差についてまとめてみました。
もくじ
住んでる場所(家)
高台の豪邸と独特の臭い漂う半地下の家。
日本ではなじみがありませんが、韓国の住宅地を見渡すと、地面のすぐ上が窓になっている半地下部屋で作られた家がけっこうあります。
部屋の半分が半分地上で半分地下だから半地下というわけです。
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家賃が安い代わりにカビが生えやすく、水道の水圧も低く、トイレが住居人の頭の高さの位置にあったりするため、衛生上よろしくない構造なのです。
虫なんかもしょっちゅう入り込りこみます。
大雨や台風のときには、大量の雨水が流れ込んできます。
韓国国内で半地下の家というのは、貧困層の象徴的な存在なのです。
作中では道に撒かれた消毒剤やら道で小〇などが流れ込んできたりと大変そうな様子が描かれていました。
大雨により家が水没するシーンは半端なかったです。
また家の中は狭く散らかっており、外の人が嗅ぐと臭い独特の臭いがします。
実際の撮影の場所もポンジュノ監督のこだわりで臭かったのだとか・・・。(セットなのに)
一方の金持ち一家パク家の家というのは高台の豪邸なのです。
大雨による災害で水没する心配は皆無。
掃除・料理・洗濯はすべてもお手伝いさん(家政婦)が行います。
物が乱雑に散らかっているということもなく、ビッシリ片付けられていて綺麗です。
家主でさえ100%家の隅々まで把握できていない広さで、窓ガラスなんかすり抜けられるのではないかというくらい大きくて綺麗なのです。
世界中のお酒が揃えられていたり、車が何台も収容できる自動開閉のガレージが付いていたり、庭はフリスビーができるほどに大きくスプリンクラー付きの青い芝生があります。
移動手段
お金持ち一家の乗り物は運転手付きのベンツ(おそらくSクラス)。
半地下暮らしの貧乏なキム家は車を持てず、徒歩や地下鉄での移動となります。
仕事で大きな収入を得ている人々というのはタクシーや新幹線を毎日のように乗りこなしますよね。
出張などあちこち動き回るという人もいれば、働く必要が無いから遊びでいろいろな場所まで生き放題という人もいるわけです。
一方の所得の低い人たちというのは、出費を少なくしたいのでコストの低い地下鉄なんかに乗るわけです(都会の人は)。
映画内の裕福なパク一家の会話でも
「もう何年も地下鉄に乗ってない」
と発言するシーンが個人的に印象的でした。
一方のキム一家の移動手段は電車や徒歩なわけです。
おまけに仕事場が高台の豪邸となると、階段を上り下りしなければならないのでけっこう大変です。
スクリーン越しでロケ地の階段を見た感じ、何百段もあってお年寄りには上り下りが大変そうな印象です。
教育

子供の教育においても、その格差は一目瞭然。
大学に進学するための予備校にも通えない貧乏な子と、親が高額なお金を払い、専属の家庭教師を付けて勉強している金持ちの子。
どちらが有利かは一目瞭然です。
お金持ちの家に生まれるというだけで、幼稚園から~大学進学や就職に至るまで、これでもかというほど差が開くわけです。
(韓国は日本以上に受験戦争が激しい国)
バカで無一文の状態から勉強して学位を取る人ももちろんいますが、生まれつきの経済力がある家の方がアドバンテージがあるわけです。
食べ物
半地下暮らしのキム一家は、技士食堂(키사싯탄:キサシッタン)と呼ばれる食堂で食事をとる様子も描かれています。
日本語訳すると運転手食堂という意味です。
作中でもタクシー運転手の人が多く利用している様子が描かれていました。(一般の人も利用可能)
西日本で言うところの「ザめしや」みたいなかんじのところです。
バイキングみたく色んなおかずを安く食べることができます。
1,500円するランチを食べている丸の内のOLなんかは無縁の場所と言えるでしょう。
ハイクラスの生活を送るパク一家は、家政婦が山盛りのフルーツをカットして部屋に運んだりする様子が描かれています。
また印象的なのは、ジャージャー面なるインスタント麺の中に韓牛のステーキをいれて食べていたシーンです。
なんと贅沢で豪快な間食なのだろうと思いました。
また犬に与えるおやつも豪華でしたね。
日本だとサラダにいれるアレです。
仕事
ITベンチャー企業で財を成しているイケイケのパク一家。
対する貧乏な家の大黒柱キム・ギテクは過去に台湾で行ったカステラ事業で失敗した経験を持っています。
一家全員失業中の身なので、ピザの箱の組み立ての内職をして生計を立ているわけです。
僕なんかもコンビニでレジ打ちしてお金を稼いでいるしょうもない人間なので、ハイクラスな人たちの仕事やライフスタイルというのは強い関心があります。
そりゃね、コンビニのレジ打ちばかりやってたら、ギャラのいい金持ち一家での仕事なんて憧れますよ。
ベンツの運転もできるし、ご主人様の送り迎えをすることで高額なギャラをもらえるなんて最高ではありませんか。
今の時代普通に就職して働いたって、十分満足できるお金を稼げている人ってかなり限られます。
多くの人にとって、この貧乏な家族が金持ち一家に寄生していく様子がたまらなく面白く映るわけです。
雨災害による被害の度合い

無害なパク一家と家の中に腰の位置まで水が浸水し、命の危険性さえ危ぶまれるほどに深刻なダメージを受けたキム一家。
家の中まで水が浸水してくるとかヤバすぎます。復旧にものすごく時間がかかるし、洪水被害によって生活レベルが理不尽に下げられてしまう。
押入れの奥の方にしまってある布団からアルバムまで。
思い出も何もかも流されてしまうわけです。
空が晴れても翌日から大変です。
体育館みたいな避難所で物資をもらい、雨でメチャクチャになった部屋の片づけをしなければなりません。
僕の関東の方に住んでいる友達も、千葉の大雨災害のときは知人の部屋の片づけが悲惨だったと言っていたので。
布団も何もかもみんな捨てなければなりません。
一方の高級住宅地に暮らす人々の場合、場所が小高い丘の上にあるので家が水没するなんてことはありません。
嵐の過ぎ去った翌日の空は青々として爽やかなものです。
災害復興に苦しむ下々の者たちには目もくれず、優雅に誕生日パーティーを開きます。
映画を見てみると分かりますが、まるで王様と奴隷のような撮りかたをされていました。
金持ちの無頓着っぷりというのをこれでもかというほどに描いています。
まとめ
貧困問題というのは多くの人の心に強い共感や関心を呼ぶ作品ジャンルです。
ポン・ジュノ監督は当初、韓国内に土着的にある格差問題が、文化の違う他の国々からどれだけの評価を得られるのか不安だったと語っていました。
ところがそんな不安など一切抱く必要はなかったのです
社会格差を描いた『パラサイト 半地下の家族』は国境を越え、世界各国で大絶賛されました。
アカデミー賞最有力候補に名前が挙がっております。
数年に一度の超大作であることは間違いありません。
パラサイトは僕も梅田の先行上映で2回見た限りです。
(あと2~3回は見たいなぁ・・・)
この記事で書いた主な格差の表現は作中でも骨子となるポイントです。
がしかし!
当ブログを読んでくれている人の中に「こういった格差の描かれ方もしていたよ」みたいな発見があれば、教えていただけると嬉しいです。
後ほどブログに加筆したいので^^
特にまだ見てない方。
ポンジュノ監督の格差を表現するためのメタファーを意識した表現やカメラワークは必見です。
1シーンごとに無駄が一切なく、映画を見始めてから見終わるまで気が抜けません。
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